和食器のお手入れ完全ガイド|陶器・磁器・漆器のシミ対策と長持ちの秘訣
お気に入りの和食器にいつの間にかシミがついていた、そんな経験はありませんか。あるいは、大切にしまっておいた器を久しぶりに取り出したら、カビが生えていて驚いたことはないでしょうか。
和食器は洋食器に比べて繊細な素材が多く、誤った洗い方や保管方法がシミ・割れ・欠けの原因になることがあります。しかし、正しいお手入れを知っていれば、器は使い込むほどに味わいが増し、まるで「育てる」ような楽しさが生まれます。
私たちいとをかし編集部は、元料理人として長年数え切れないほどの器と向き合ってきました。この記事では、陶器・磁器・漆器それぞれに合ったお手入れの方法と保管のコツを、プロの目線からわかりやすく解説します。
陶器のお手入れ方法|使う前から洗い方・保管まで

陶器は和食器の中でもっとも繊細で、もっとも味わい深い素材です。土を原料として焼き上げた陶器には表面に細かな気孔があり、この気孔が独特の風合いを生む一方で、水分や油を吸いやすいという特性を持っています。
使う前・洗う時・保管する時、それぞれの場面で適切なケアを行うことが大切です。ここでは、陶器のお手入れを4つのポイントに分けて解説します。
使い始めの「目止め処理」で器を守る
新しい陶器を初めて使う前には、「目止め」と呼ばれる処理を行うことを強くおすすめします。目止めとは、陶器の気孔をふさぐことでシミや臭いの染み込みを防ぐ伝統的な手法です。
もっとも一般的な目止めの方法は、お米のとぎ汁で煮る方法です。手順は以下の通りです。
1. 鍋に陶器が十分に浸かる量の水を入れる
2. お米のとぎ汁、または生米を大さじ2〜3杯加える
3. 弱火で20〜30分ほどゆっくり煮る
4. 火を止め、そのまま自然に冷めるまで放置する
5. 器を取り出し、ぬるま湯でよく洗い流して乾燥させる
目止めを行うかどうかで、器の寿命は大きく変わります。とくに備前焼・信楽焼・萩焼など吸水性の高い陶器では、使い始めの目止めが欠かせません。
使い始め前の「高台」チェック|テーブルを傷つけないために
目止めと合わせて確認しておきたいのが、器の底にある「高台(こうだい)」の状態です。高台とは器底の輪状の突起部分で、テーブルや棚板に直接触れる箇所です。
陶器の高台は釉薬がかかっていない素地のままのことが多く、ザラついている場合は紙やすり(600〜800番程度)で軽く磨いておくとよいでしょう。これにより、テーブルクロスや棚板への傷を防ぎ、重ねて収納するときに下の器の表面を傷つけるリスクも減らせます。
指の腹で高台をそっと触れてみて、引っかかりを感じたら磨いておくひと手間が、器と周囲の両方を長持ちさせます。
日常の洗い方|「使ったらすぐ洗う」が基本
陶器を洗う際の基本は、「使ったらすぐに洗う」ことです。食事の後に時間をおいてしまうと、油や色素が素地に染み込み、取れないシミの原因になります。
正しい洗い方の手順をご紹介します。
まず、器にぬるま湯を含ませて軽くすすぎます。いきなり熱湯をかけると、急激な温度変化で割れる危険があるため注意してください。次に、中性洗剤を少量つけたやわらかいスポンジで優しく洗います。タワシや研磨剤入りのスポンジは表面の釉薬を傷つけるため、絶対に使わないでください。
洗剤をしっかりすすいだ後は、清潔なふきんで水気を拭き取るか、風通しの良い場所で完全に自然乾燥させましょう。水気が残ったまま収納すると、カビや臭いの原因になります。
陶器で避けるべきNG行為
陶器の扱いでよくある失敗をまとめました。以下の行為は器を傷めるため避けてください。
| NG行為 | 理由 |
|---|---|
| つけ置き洗い | 水分が素地に染み込み、シミ・臭いの原因になる |
| 漂白剤の使用 | 素地にダメージを与え、変色する可能性がある |
| 食洗機での洗浄 | 高温水流が素地を傷め、釉薬の剥離を招く |
| 電子レンジでの加熱 | 吸水した水分が膨張し、割れの原因になる |
| 急激な温度変化 | 冷蔵庫から直接熱湯は熱割れのリスクあり |
磁器のお手入れ方法|丈夫でも油断は禁物

磁器は石を原料として高温で焼き上げた素材で、陶器に比べて吸水性がほとんどなく、硬くて丈夫です。そのため日常のお手入れはシンプルですが、金彩・銀彩が施された器や繊細な絵付けのあるものは特別な注意が必要です。
ここでは、磁器に適した洗い方、電子レンジ・食洗機の対応早見表、そして見落としがちな注意点の3点を解説します。
磁器に適した洗い方
磁器の洗い方は、基本的に中性洗剤とやわらかいスポンジでの手洗いがベストです。磁器は硬い素材ですが、他の食器とぶつかると簡単に欠けてしまいます。洗う際は1枚ずつ丁寧に扱い、シンクの中に食器を溜めて洗うことは避けましょう。
食洗機対応と明記されている磁器であれば食洗機を使用できます。ただし、食洗機不可の場合は絵付けや金彩が剥げる原因になるため、必ず商品説明を確認してください。
当店の古染十草 お茶碗 波佐見焼のような染付磁器も、やわらかいスポンジによる手洗いを続けることで染付の美しさを長く保てます。波佐見焼の特徴と選び方も合わせてご覧いただくと、器選びの参考になります。
電子レンジ・食洗機の対応早見表
磁器の電子レンジ・食洗機対応については、以下の表を参考にしてください。
| 種類 | 電子レンジ | 食洗機 |
|---|---|---|
| 白磁・染付(金銀彩なし) | 基本OK | 対応品はOK |
| 金彩・銀彩入り | NG | NG |
| 色絵(上絵付け) | 商品による | 商品による |
| 波佐見焼・美濃焼(日常使い) | 対応品多数 | 対応品多数 |
判断が難しい場合は、手洗い・電子レンジ不使用を原則とするのがもっとも安全です。
磁器で気をつけたいポイント
磁器は丈夫な印象がありますが、薄手のものほど衝撃に弱いという特性があります。有田焼の薄手の煎茶碗や、磁器製の酒器などは特に注意が必要です。
また、磁器であっても貫入(表面の細かなひび模様)が入っている器は、そこから茶渋や色素が入り込むことがあります。貫入のある磁器は陶器と同様に、使用後はなるべく早く洗うようにしましょう。
漆器のお手入れ方法|もっとも繊細な和食器

漆器は木の器に天然の漆を塗り重ねたもので、和食器の中でもっとも繊細な素材です。独特の艶やかな美しさと軽やかな手触りが魅力ですが、お手入れには細心の注意が必要です。
漆器の正しい洗い方
漆器を洗う際は、ぬるま湯(30〜40℃程度)とやわらかいスポンジを使って手洗いしてください。中性洗剤は少量であれば使用できますが、研磨剤入りの洗剤やクレンザーは漆を傷つけるため厳禁です。
洗った後はすぐにやわらかい布で水気を拭き取ります。自然乾燥は水跡が残る原因になるため、漆器に関しては拭き上げが基本です。
漆器の取り扱い注意事項
漆器は熱・紫外線・乾燥に弱い素材です。以下の点に注意してください。
・食洗機は絶対NG:高温の湯と強力な洗剤で漆が変色・剥離します
・電子レンジも使用不可:木の器が変形・損傷する危険があります
・直射日光を避ける:紫外線で漆が変色し、劣化が進みます
・長時間のつけ置き禁止:漆が白く濁る原因になります
保管・収納のコツ|正しくしまって長く使う

せっかく正しく洗っても、保管の仕方が悪いと割れや欠けの原因になります。和食器の保管には、素材を問わずいくつかの共通した大切なポイントがあります。
重ねすぎない収納が基本
和食器の収納でもっとも気をつけたいのが「重ねすぎ」です。重い器を何枚も重ねると、下の器に過度な負担がかかり、欠けや割れの原因になります。
重ねて収納する場合は、器と器の間に和紙・キッチンペーパー・やわらかい布を1枚ずつ挟んでください。これにより傷の防止と衝撃の吸収ができます。目安として5枚以上は重ねないこと、同じサイズ・形の器同士でまとめることを心がけましょう。
長期保管のポイント
季節の器やおもてなし用の器など、長期間使わない器を保管する場合は特に注意が必要です。
陶器の長期保管では湿気がもっとも大きな敵です。押し入れや湿度の高い場所での保管はカビの発生につながります。和紙でくるんで風通しの良い棚に置くか、乾燥剤を入れた箱に収めるのが理想的です。
漆器の長期保管では逆に乾燥のしすぎに注意です。漆は適度な湿度を必要とするため、乾燥しすぎる場所ではひびが入ることがあります。和紙に包んで箱に入れ、年に数回は取り出して状態を確認しましょう。
長期保管から取り出した器は、使用前に一度ぬるま湯で軽く洗ってからお使いください。
シミ・臭いがついた器のお手入れ法
毎日気をつけていても、使い続けるうちにシミや臭いが気になることがあります。そんなとき、漂白剤を使ったりタワシでこすったりすると、器を傷める原因になります。
汚れの種類と素材を正しく見極めた上で、適切な方法を取ることが大切です。シミ・臭い・カビの種類別に、具体的な対処法を解説します。
茶渋・醤油のシミには「重曹ペースト」
陶器・磁器についた茶渋・コーヒーじみ・醤油の色素には、重曹ペーストが有効です。重曹は弱アルカリ性で酸性の汚れを中和し、クレンザーよりも器への負荷が小さいのが特徴です。
手順は以下の通りです。
1. 重曹と水を2:1の割合で混ぜてペーストを作る
2. シミ部分に塗り込み、30分〜1時間放置する
3. やわらかいスポンジで軽くなでるように洗い流す
4. ぬるま湯でよくすすぎ、完全に乾燥させる
素地の奥まで入り込んだシミは家庭での除去が難しいため、日頃の目止め処理と使用後すぐの洗浄がシミ予防の最善策です。どうしても気になる場合は、金継ぎによる器の再生という選択肢もあります。
臭い・カビには「酢水」と「天日干し」
保管中にカビが生えた場合や、食材の臭いが器に染み込んだ場合は、酢水と天日干しの組み合わせが効果的です。
カビへの対処:水1Lに対して酢50ml(5%程度)を加えた酢水に、器を30〜60分つけてください。その後十分に洗い流し、完全に乾燥させます。
臭いへの対処:洗浄後も臭いが残るときは天日干しが有効です。直射日光の当たる場所に2〜3時間置くと、紫外線の殺菌効果で臭いの原因を取り除けます。
ただし、これらの方法は陶器・磁器のみに使えます。漆器に酢水や直射日光は禁物で、変色・劣化の原因になります。漆器の臭いにはやわらかい乾いた布での乾拭きのみで対応してください。
よくある質問(FAQ)
Q. 陶器についたシミは落とせますか?
軽いシミなら、重曹ペースト(重曹+少量の水)を塗り込み、30分ほど置いてから洗い流すと改善することがあります。ただし、深く染み込んだシミは落としにくいため、目止め処理で予防することが大切です。
Q. 磁器と陶器の見分け方は?
簡単な見分け方は「光に透かす」方法です。磁器は白く光を透かすほど薄く焼き締まっており、陶器は不透明です。また、器の底(高台)を確認すると、陶器はザラっとした土の質感が見え、磁器は白くなめらかな肌をしています。
Q. 金継ぎをした器のお手入れ方法は?
金継ぎをした器は、漆と金が使われているため手洗いが必須です。電子レンジ・食洗機・急激な温度変化はすべてNGです。やわらかいスポンジで優しく洗い、自然乾燥させてください。
Q. 割れた器は修理できますか?
金継ぎという日本の伝統技法で修理が可能です。金継ぎは割れ・欠けた器を漆と金で修復するもので、修復跡がむしろ器の新たな美しさとなります。いとをかしでは、ご購入いただいた器の生涯破損保証として無料金継ぎサービスを提供しています。器の欠けが金継ぎで美しく蘇る仕組みについてもあわせてご覧ください。
Q. 陶器に食洗機は使えますか?
基本的には手洗い推奨です。陶器は吸水性が高く、食洗機の高温水流や乾燥により素地にダメージを与える可能性があります。「食洗機対応」と明記されている商品のみ食洗機を使用してください。
Q. 和食器に臭いがついてしまったら、どう取り除けばいいですか?
陶器・磁器の場合は、酢水(水1Lに対して酢50ml)に30〜60分つけた後、十分に洗い流して完全乾燥させてください。直射日光での天日干しも消臭に効果的です。漆器は酢水・天日干しとも使用不可のため、やわらかい乾いた布での乾拭きのみで対応します。
Q. 保管中に器へカビが生えてしまいました。どう対処すればいいですか?
陶器・磁器に生えた軽いカビは、酢水(水1Lに酢50ml)に30〜60分つけて洗い流すことで対処できます。その後は完全乾燥させ、乾燥剤入りの箱での保管でカビの再発を防ぎましょう。カビが深く素地に入り込んでいる場合は修復が難しいため、早めの対処が大切です。
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まとめ
和食器のお手入れは、素材ごとの特性を理解することが第一歩です。この記事のポイントをおさらいしましょう。
陶器:使ったらすぐ洗い、目止め処理と高台確認で器を守る。やわらかいスポンジで手洗いが基本。食洗機・電子レンジは基本的にNG。
磁器:比較的丈夫だが、金彩・絵付けには注意。食洗機・電子レンジ対応は商品によって異なるため、必ず確認する。
漆器:もっとも繊細な素材。ぬるま湯で手洗いし、すぐに拭き上げる。食洗機・電子レンジは絶対NG。
保管:重ね方に注意し、器と器の間にクッション材を挟む。陶器は湿気、漆器は乾燥に注意する。
シミ・臭い・カビ:茶渋には重曹ペーストを、臭いやカビには酢水と天日干しを活用する。いずれの方法も漆器には使用不可。
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いとをかし編集部は、元料理人のメンバーを中心に、器と食の関係を深く探求しながら伝統工芸品の魅力を発信しています。
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