大切にしていた器が欠けてしまったとき、あなたはどうしますか?「もったいないけど捨てるしかない」と諦めていませんか?
実は、食器のリペア方法にはいくつもの選択肢があります。日本の伝統技法である
金継ぎをはじめ、接着剤による応急処置、パテでの補修、そして買い替えという判断まで、それぞれに費用もメリットも大きく異なります。
私たちいとをかし編集部は、元料理人として数え切れないほどの器と向き合ってきました。プロの厨房では毎日のように器が欠け、割れ、そのたびに「修理するか、買い替えるか」を判断してきた経験があります。その経験をもとに、
食器リペアの種類と費用を徹底的に比較し、あなたの器にとって最善の選択肢を見つけるお手伝いをいたします。
食器リペアの4つの方法を徹底比較

食器が割れたり欠けたりしたとき、選べるリペア方法は大きく分けて
4つあります。それぞれの特徴を正しく理解することが、後悔しない選択への第一歩です。
金継ぎ(きんつぎ):日本が誇る伝統修復技法
金継ぎは、割れや欠けを漆(うるし)で接着・充填し、仕上げに金粉や銀粉を蒔いて装飾する日本古来の修復技法です。室町時代から約600年の歴史を持ち、「壊れたものを修復し、その傷跡をむしろ美として愛でる」という日本独自の美意識が息づいています。
金継ぎの最大の特長は、
修復後の器がむしろ美しくなるという点です。金色の線が走る修復跡は「景色」と呼ばれ、その器だけの唯一無二の個性になります。また、本漆と天然素材を使うため
食品安全性が高く、修復後も安心して食事に使えます。
対応できる破損の種類も幅広く、小さな欠けから複数に割れた状態、ひび割れまでほぼすべての損傷に対応可能です。ただし、粉々に砕けてしまった場合や、破片が失われている場合は修復の難易度が上がります。
接着剤による修理:手軽さが魅力のDIY修復
市販の
陶磁器用接着剤やエポキシ系接着剤を使う方法は、最も手軽で低コストなリペア方法です。ホームセンターや100円ショップでも材料が手に入り、自宅ですぐに作業を始められます。
ただし、注意すべき点がいくつかあります。まず
食品安全性の問題です。多くの市販接着剤は食器への使用を想定しておらず、口に触れる部分や食品が直接触れる部分の修理には適していません。エポキシ系接着剤は特に注意が必要で、硬化後も微量の化学物質が溶出する可能性があります。
仕上がりについても、接着跡が目立ちやすく、時間が経つと黄変することもあります。接着強度は金継ぎに比べると弱く、食洗機や電子レンジの使用で再び剥がれるリスクがあります。
パテ・充填剤による補修:欠けの補修に特化
エポキシパテや陶器用補修材を使って、
欠けた部分を埋める方法です。割れた破片が見つからない場合や、小さな欠けを補いたいときに有効です。
パテ補修は欠けの修復には向いていますが、割れの接合には不向きです。また、色合わせが難しく、補修箇所が目立つことが多いのが難点です。食品安全性についても接着剤と同様の注意が必要で、食品が直接触れる内側の補修にはおすすめできません。
買い替え:新しい器との出会い
修理ではなく
新しい器を購入するという選択肢も、立派な一つの判断です。特に以下のような場合は、買い替えの方が合理的なこともあります。
修理費用が器の購入価格を大きく超える場合、破損が激しく修復が難しい場合、量産品で同じものが手に入る場合などは、買い替えを検討してもよいでしょう。
ただし、思い入れのある器、作家ものの一点物、もう手に入らない器については、費用をかけてでも修理する価値があります。器への愛着は、金額では測れないものです。
リペア費用の相場と比較表

リペアにかかる費用は、修復方法と破損の程度によって大きく変わります。ここでは具体的な金額を比較しながら、コストパフォーマンスの観点からも整理します。
修理方法別の料金目安
| 修理方法 |
費用目安 |
期間 |
食品安全性 |
耐久性 |
| 金継ぎ(プロ依頼) |
3,000円〜15,000円 |
1〜3ヶ月 |
◎(本漆使用) |
◎ |
| 金継ぎ(DIYキット) |
3,000円〜8,000円(キット代) |
1〜2ヶ月 |
○〜◎ |
○ |
| 接着剤(DIY) |
300円〜1,500円 |
即日〜数日 |
△(要確認) |
△ |
| パテ補修(DIY) |
500円〜2,000円 |
即日〜数日 |
△(要確認) |
△ |
| 買い替え |
器の価格による |
即日 |
◎ |
◎ |
破損の程度別の金継ぎ料金
金継ぎの費用は破損の程度によって段階的に変わります。プロに依頼した場合の一般的な料金目安を以下にまとめました。
| 破損の程度 |
具体例 |
プロ依頼の相場 |
| 小さな欠け(1cm未満) |
縁の小さなチップ |
3,000円〜5,000円 |
| 大きな欠け(1cm以上) |
縁の大きな欠損 |
5,000円〜8,000円 |
| ひび割れ |
表面のクラック |
5,000円〜8,000円 |
| 割れ(2〜3片) |
2つに割れた状態 |
8,000円〜12,000円 |
| 複雑な割れ(4片以上) |
複数に砕けた状態 |
10,000円〜20,000円 |
| 欠損部分の復元 |
破片が失われた場合 |
15,000円〜 |
費用対効果の考え方
「修理と買い替え、どちらがお得か」は単純に金額だけでは判断できません。
器の購入価格、
思い入れの深さ、
替えが利くかどうかの3つの軸で考えましょう。
たとえば、1,000円の量産品マグカップが割れた場合、8,000円の金継ぎ修理は費用対効果が低いかもしれません。しかし、旅先で出会った作家ものの湯呑みや、故人から受け継いだ大切な器であれば、修理費用がいくらであっても「直す」という選択に価値があります。
また、金継ぎで修復された器は
世界に一つだけの存在になります。修復後の金の線が加わることで、器としての魅力と価値がむしろ高まるのです。
プロに依頼する場合の選び方と注意点

金継ぎをプロに依頼する場合、業者選びは仕上がりを大きく左右します。信頼できる職人に出会うためのポイントを、私たちの経験からお伝えします。
信頼できる金継ぎ業者を見極める5つのポイント
1. 使用素材の確認
最も重要なのは、
本漆(ほんうるし)を使っているかどうかです。安価な修復サービスの中には、合成漆や樹脂を「金継ぎ」と称して提供しているケースもあります。食器として使い続けるなら、本漆と天然素材を使った本格的な金継ぎを選びましょう。
2. 修復実績の確認
過去の修復事例を写真やポートフォリオで見せてもらいましょう。金の線の美しさ、仕上がりの丁寧さ、さまざまな破損パターンへの対応力がわかります。
3. 見積もりの明確さ
事前に写真を送って見積もりを出してもらえる業者が安心です。「実物を見ないとわからない」という業者も多いですが、概算だけでも提示してくれるところを選びましょう。
4. 納期の確認
本漆の金継ぎは、漆の乾燥・硬化に時間がかかるため、通常
1〜3ヶ月程度かかります。「即日仕上げ」「1週間で完成」を謳う業者は、本漆ではなく合成素材を使っている可能性があります。
5. アフターサービス
修復後に再び同じ箇所が破損した場合の対応や、仕上がりに不満がある場合のやり直し対応があるかどうかも確認しておくと安心です。
業者選びをさらに深く比較したい方は、
金継ぎ業者の選び方と評判の見極め方|後悔しない5つのポイントもあわせて参考にしてください。
依頼の流れと送り方
金継ぎの依頼は一般的に以下の流れで進みます。
まず、破損した器の写真を撮影し、業者に送って見積もりを依頼します。見積もりに納得したら、器を梱包して郵送します。梱包の際は、破片が動かないようプチプチ(気泡緩衝材)で一つずつ丁寧に包み、段ボール箱にしっかり固定してください。
破片は一つも捨てずにすべて同封することが大切です。小さな欠片でも、修復時に必要になることがあります。
到着後、職人が実物を確認して正式な見積もりと納期を連絡してくれます。修復完了後は、丁寧に梱包された状態で返送されます。
見積もりが無料でできる業者の特徴や確認ポイントについては、
器の修理見積もりは無料でできる?金継ぎ費用相場と依頼方法を解説でも詳しく紹介しています。
DIY金継ぎキットという選択肢
近年は、自宅で金継ぎを体験できる
DIYキットも充実してきました。価格は3,000円〜8,000円程度で、本漆と金粉がセットになっているものもあれば、初心者向けに合成漆を使った簡易キットもあります。
DIY金継ぎの魅力は、
自分の手で器を修復する体験そのものにあります。時間と手間はかかりますが、自分で直した器への愛着はひとしおです。ただし、本漆は肌にかぶれを起こすことがあるため、手袋の着用など安全面の配慮は欠かせません。
修理できない器・依頼前に確認したいこと
金継ぎは多くの損傷に対応できますが、
修理が難しいケースも存在します。依頼前に確認しておくことで、無駄な往復の手間を防ぐことができます。
まず
粉々に砕けてしまった器は、形の復元が現実的ではありません。破片の数が極端に多い場合や、粉状になってしまった場合は、事前に業者へ相談することをおすすめします。また
金属・プラスチック・シリコン製の器には漆が定着しないため、金継ぎの依頼対象にはなりません。
電子レンジ対応のための金属コーティングや、特殊な光沢処理が施された釉薬の器も、漆の接着が難しいことがあります。
ガラス製品や薄い磁器は業者によって対応が分かれるため、写真を送って事前確認することが不可欠です。
「この器は直せるのか?」と迷ったときは、破損の状態と素材を整理してから業者に相談するのが最善の方法です。
陶器の割れ方で修理できるか決まる?見極め方と最適な修復法もあわせて読むと、修復可否の判断基準がより明確になります。
修理後の強度について知っておきたいこと
金継ぎで修復した器は美しくよみがえりますが、
修復前と比べて強度が多少低下するという事実は知っておくべきです。これは金継ぎに限らず、あらゆる修復方法に共通することです。
元料理人の視点から言えば、修復した器は「より慎重に、より丁寧に使うべき器」として向き合うべきものです。乱暴に扱えば、修復箇所が再び割れるリスクがあります。
修復箇所への直接的な衝撃を避け、電子レンジや食洗機の使用を控えることが基本の心がけです。
ただし、この事実が金継ぎの価値を下げるわけではありません。本漆による金継ぎは接着強度が高く、適切に扱えば
数十年以上使い続けられる耐久性を持ちます。傷を経て、より丁寧に使われる器になる。それが金継ぎの本質でもあります。
修復後の具体的なお手入れ方法については、
金継ぎで器を長く使う|修復の方法・費用・お手入れまで徹底解説で詳しく紹介しています。
リペア後の器を長く使うためのお手入れ

せっかく修復した器を長く使い続けるためには、適切なお手入れが欠かせません。修復方法に応じた使い方のポイントをご紹介します。
金継ぎ修復後の器の扱い方
金継ぎで修復した器は、以下の点に気をつけて使いましょう。
柔らかいスポンジで手洗いが基本です。金粉の仕上げ部分は研磨剤入りの洗剤や硬いたわしでこすると剥がれる恐れがあります。中性洗剤とぬるま湯で優しく洗い、すぐに水気を拭き取ってください。
食洗機・電子レンジは使用を避けましょう。高温や急激な温度変化は、漆や接着部分にダメージを与える原因になります。オーブンも同様です。
長時間の水漬けは避けてください。使用後は早めに洗って乾かすことで、漆の劣化を防げます。金継ぎの修復部分は、適切に扱えば数十年単位で持つほどの耐久性があります。
接着剤・パテで修復した器の注意点
接着剤やパテで修復した器は、金継ぎ修復以上に慎重な扱いが必要です。
熱湯を直接注がない、
食洗機・電子レンジは絶対に使わない、
食品が直接触れる面の修復箇所には食品を載せないようにしましょう。
もし修復箇所から再び剥がれが生じた場合は、食品安全の観点からも、金継ぎへの修復し直しを検討されることをおすすめします。
よくある質問(FAQ)
Q. 接着剤で修理した食器は日常使いできますか?
接着剤の種類によりますが、基本的には
食品が直接触れない部分の修理にとどめることをおすすめします。食品安全性が明記された製品を選ぶ必要があり、エポキシ系接着剤は食器への使用に適していないものがほとんどです。日常使いの食器であれば、本漆による金継ぎが最も安全で安心な修復方法です。
Q. 金継ぎとDIY接着剤、どちらが長持ちしますか?
本漆による金継ぎの方が圧倒的に耐久性が高いです。正しい手順で施された金継ぎは、適切に使えば何十年も持ちます。一方、市販の接着剤は経年劣化で黄変したり、温度変化や衝撃で再び剥がれたりするリスクがあります。長く使いたい大切な器ほど、金継ぎをおすすめします。
Q. 金継ぎの修理期間が1〜3ヶ月と長いのはなぜですか?
本漆は化学接着剤と違い、湿度のある環境でゆっくり硬化する天然素材です。接着、下地、中塗り、仕上げと
複数の工程があり、各工程ごとに漆を乾燥・硬化させる必要があります。この手間と時間こそが、金継ぎの耐久性と美しさの源です。急ぎの場合は事前に職人に相談しましょう。
Q. 割れた器の破片を一部なくしてしまいました。修理できますか?
はい、修理可能です。失われた部分は漆とパテ(刻苧・こくそ)で形を復元し、その上から金や銀で仕上げます。欠損が大きいほど費用は上がりますが、
破片がなくても修復できるのが金継ぎの懐の深さです。
Q. 修理に出した器は元通りになりますか?
割れや欠けを「なかったこと」にはできませんが、金継ぎによって修復跡が
美しい「景色」に変わります。日本の美意識では、傷を隠すのではなく、その歴史を受け入れて新たな美を生み出すことに価値を見出します。多くの方が「修復前より好きになった」とおっしゃいます。
Q. 金継ぎを依頼できない器はありますか?
はい、修理が難しいケースがあります。
金属・プラスチック・シリコン製品は漆が接着しないため対象外です。粉々に砕けた器や、電子レンジ対応のための金属コーティングが施された陶磁器も難しい場合があります。ガラス製品は業者によって対応が分かれます。まず写真を送って事前に修復可否を確認するのが最善の方法です。
Q. 金継ぎ後の器は元より弱くなりますか?
はい、修復後は修復前より強度が多少低下します。これはいかなる修復方法でも同様です。ただし
本漆による金継ぎは耐久性が高く、丁寧に扱えば数十年使い続けられます。電子レンジ・食洗機の使用を避け、柔らかいスポンジで手洗いすることが長持ちのコツです。修復箇所への直接的な衝撃は避けるようにしてください。
いとをかしが選ばれる理由
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まとめ
食器リペアの主な方法と特徴を改めて整理します。
金継ぎは費用3,000円〜と最も高額ですが、食品安全性・耐久性・美しさのすべてにおいて最高品質の修復方法です。大切な器を「修復前より好きになる」可能性すら秘めています。
接着剤・パテは数百円から手軽に始められますが、食品安全性に不安が残り、耐久性も限定的です。応急処置やディスプレイ用途には向いていますが、日常使いの食器には注意が必要です。
買い替えは手っ取り早い選択ですが、思い入れのある器、二度と手に入らない器には不向きです。
大切な器ほど、
プロの金継ぎに託すことが最善の選択です。費用と時間はかかりますが、修復後の美しさと安心感は他のどの方法にも代えがたいものがあります。そして、いとをかしでお買い上げの器であれば、生涯保証で
金継ぎ修復が無料です。壊れることを恐れず、毎日の食卓で器を存分にお楽しみください。
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いとをかし編集部は、元料理人のメンバーを中心に、器と食の関係を深く探求しながら伝統工芸品の魅力を発信しています。