「金継ぎを自分でやってみたいけれど、何から始めればいいかわからない」
そう感じている方は、決して少なくありません。
割れた器を金で継ぎ、新しい命を吹き込む金継ぎ。
美しい仕上がりへの憧れはあっても、
正しい道具と手順を知らないまま始めると、思わぬ失敗につながることがあります。
料理人として長年厨房に立ち、器と向き合ってきた私たちは、「やり方がわからない」という最初の一歩の難しさをよく知っています。
この記事では、
金継ぎのやり方を初心者の方に向けて、必要な道具の選び方から10ステップの手順、失敗しないためのコツ、プロへの依頼との比較まで、丁寧に解説します。
金継ぎを始める前に知っておくこと

金継ぎのやり方を学ぶ前に、基本的な考え方と注意点を押さえておきましょう。
知識なしに始めると、思わぬ失敗や体への影響につながることがあります。
本漆の扱い方から簡易キットとの違いまで、まず土台となる知識を確認していきましょう。
金継ぎとは
金継ぎは、室町時代から伝わる日本の伝統的な修復技術です。
割れた器を漆で接着し、継ぎ目を金粉で装飾します。
傷を隠すのではなく、傷を新しい美しさとして活かすという日本独自の美意識が込められています。
料理人として器を使い続けてきた私たちにとって、割れた器が金継ぎによって「景色」を持つ器へと生まれ変わる様子は、いつ見ても心を動かされます。
本漆と簡易金継ぎの違いを理解する
自分で金継ぎのやり方を実践する際、最初に決めるべきことがあります。
「本漆を使うか、簡易キット(合成漆)を使うか」という選択です。
それぞれの特徴を整理すると、次のようになります。
| 比較項目 |
本漆 |
簡易キット(合成漆・エポキシ系) |
| 食器への安全性 |
安全に使い続けられる |
製品により異なる(要確認) |
| 耐久性・接着力 |
高い(長期使用に耐える) |
やや劣る |
| 扱いやすさ |
漆かぶれのリスクあり |
扱いやすく初心者向き |
| 乾燥時間 |
1工程あたり数日〜1週間 |
数時間〜1日 |
| 完成までの期間 |
1〜3ヶ月 |
数日〜1週間 |
食器として使い続けたい場合は、必ず本漆を選んでください。
「見た目だけ直せれば良い」「飾り用の器」であれば、簡易キットでも問題ありません。
自分の目的に合った方法を選ぶことが、満足のいく仕上がりへの第一歩です。
漆かぶれへの注意
漆は触れるとかぶれることがあります。
初めて扱う方は特に注意が必要で、体質によっては軽く触れただけでも反応することがあります。
作業中は必ず使い捨て手袋を着用し、換気を十分に行いましょう。
作業後は手をよく石鹸で洗い、漆が皮膚に残らないよう心がけてください。
必要な道具一覧

道具を揃えることが、金継ぎのやり方における最初のステップです。
何が必要かを把握してから購入に進むことで、無駄なく準備できます。
基本セットと便利グッズ、そして初心者向けキットの選び方を順にご紹介します。
基本の道具
金継ぎに最低限必要な道具は以下の8点です。
-
生漆(きうるし):接着と下地に使用する。金継ぎの要となる素材
-
金粉または金消し粉:仕上げの装飾に使用。細かさにより仕上がりの印象が変わる
-
砥の粉(とのこ):漆と混ぜて下地ペーストを作る
-
テレピン油:漆を薄める溶剤。粘度調整に使う
-
小筆:漆を塗る専用の筆。毛質が柔らかいものを選ぶ
-
ヘラ:漆を混ぜたり、継ぎ目に充填する際に使う
-
耐水ペーパー:研磨用(#400〜#1000程度)。段階的に番手を上げて使う
-
室(むろ):漆を乾燥させる密閉空間。段ボール箱で代用可能
あると便利なもの
作業をスムーズに進めるために、以下のアイテムも揃えておくことをおすすめします。
-
使い捨て手袋:漆かぶれ防止のために必須。ニトリル素材が扱いやすい
-
マスキングテープ:接着時の破片固定に役立つ
-
パレットまたは不要な皿:漆を混ぜる作業台として使用
-
ティッシュや綿棒:余分な漆の拭き取りに使う
初心者には金継ぎキットがおすすめ
道具をバラバラに揃えるのが大変な場合は、必要なものがセットになった金継ぎキットが便利です。
3,000円〜12,000円程度で購入でき、説明書付きのものも多く、最初の一歩として取り組みやすい選択肢です。
ただし、キットによっては本漆ではなく合成漆が含まれている場合もあります。
食器として使い続けることを前提とするなら、
本漆を使用したキットかどうかを購入前に確認してください。
金継ぎの手順(10ステップ)

実際の金継ぎのやり方を、初心者でもわかるように10ステップで解説します。
焦らず一つひとつ丁寧に進めることが、美しい仕上がりへの近道です。
各ステップで「なぜその作業が必要か」も合わせてお伝えするので、作業の意味を理解しながら進められます。
Step 1: 器を洗って乾かす
割れた器を中性洗剤でよく洗い、油分や汚れを完全に落とします。
漆は油分や水分があると定着しにくいため、
完全に乾燥させてから作業を始めましょう(1〜2日乾燥させると安心です)。
Step 2: 破片を仮組みして順序を確認する
どの破片がどこに合うかを確認し、接着の順序を決めます。
複雑な割れ方の場合、この工程が特に重要です。
スマートフォンで写真を撮っておくと、作業中に順序を確認する際に役立ちます。
Step 3: 接着用の漆を作る
生漆と砥の粉を
1:1の比率で混ぜ、ペースト状にします。
硬さの目安は、ヘラで持ち上げたときにゆっくり落ちる程度です。
硬すぎる場合はテレピン油を少量加えて調整してください。
Step 4: 破片を接着する
漆を継ぎ目に薄く塗り、破片を合わせます。
マスキングテープで固定すると安定して接着できます。
一度に全部接着しようとせず、2〜3ピースずつ段階的に進めることが大切です。
Step 5: 室(むろ)で乾燥させる
湿度70〜80%・温度20〜25℃の環境で1週間ほど乾燥させます。
段ボール箱に濡れタオルを入れると簡易的な室になります。
夏場は自然な湿気を利用しやすく、冬場は加湿器の近くに置くと乾燥しやすくなります。
Step 6: はみ出した漆を削る
乾燥後、はみ出した漆をヘラや耐水ペーパーで削り、表面を滑らかに整えます。
この工程は仕上がりの美しさに直結するため、丁寧に進めましょう。
Step 7: 欠けを埋める(必要な場合)
欠けがある場合は、漆と砥の粉のペーストで欠けた部分を埋めます。
乾燥後に耐水ペーパーで研磨して平らに整えます。
一度で完全に埋めようとせず、薄く重ねて仕上げると収縮によるひび割れを防げます。
Step 8: 中塗りをする
継ぎ目に生漆を薄く塗り、再度室で乾燥させます。
この工程を2〜3回繰り返すことで、継ぎ目が滑らかになり、金粉の定着も良くなります。
Step 9: 金粉を蒔く
漆が
半乾きの状態のときに、金粉をふわりと蒔きます。
綿や指で軽く押さえながら定着させましょう。
乾燥しすぎると金粉が付かないため、タイミングが仕上がりを左右します。
Step 10: 仕上げ・乾燥
完全に乾燥させた後(
1週間以上)、余分な金粉を柔らかい布で払います。
必要に応じて磨けば完成です。
器として使い始めるまでには、さらに2〜3ヶ月の硬化期間を設けると安心です。
初心者がよく失敗するポイントと対策

初めての金継ぎのやり方で躓きやすいポイントと、その対策をご紹介します。
事前に知っておくだけで、ぐっと失敗が減ります。
失敗1: 漆がいつまでも乾かない
原因:湿度が低いことがほとんどです。
漆は水分を取り込むことで硬化する「酸化重合反応」によって乾くため、乾燥した環境ではいつまでも固まりません。
室の湿度を
70〜80%に保つことを徹底してください。
冬場は特に室内が乾燥しやすいため、濡れタオルを段ボール室に入れる・加湿器の近くに置くなどの工夫が有効です。
失敗2: 接着が弱く隙間ができる
原因:漆の量が少ない、または乾燥時間が不十分なことが考えられます。
接着面には漆をしっかり行き渡らせ、乾燥は必ず1週間以上確保してください。
また、接着後に器を動かしたり衝撃を与えると固まる前にズレが生じます。
マスキングテープで固定し、
乾燥中は触らずに放置することが大切です。
失敗3: 金粉がうまく定着しない
原因:漆が乾きすぎているか、逆に濡れすぎているかのどちらかです。
金粉を蒔くタイミングは「漆が半乾きの状態」が最適で、指で触れてわずかに粘り気が残る程度が目安です。
乾燥しすぎた場合は、漆をごく薄く塗り直してから再度金粉を蒔いてみてください。
失敗4: 漆かぶれになる
漆に直接触れることで起きます。
必ず
ニトリル手袋を着用し、作業中の換気も忘れずに行いましょう。
初めて本漆を扱う場合は、少量を前腕内側に塗って24時間様子を見るパッチテストをおすすめします。
かぶれてしまった場合
かぶれた部分を石鹸と流水でよく洗い流してください。
かゆみや赤みが出た場合は、患部を冷やすと症状が和らぐことがあります。
症状がひどい・範囲が広い場合は、早めに皮膚科を受診してください。
自分でやる vs プロに依頼する

金継ぎのやり方には「自分でやる」と「プロに依頼する」の2つの選択肢があります。
器の大切さ・使用目的・自分の時間によって、どちらが適しているかが変わります。
自分でやる場合のメリット・デメリット
| メリット |
デメリット |
| 費用を抑えられる(2回目以降はコストが下がる) |
道具の初期費用が3,000〜15,000円程度 |
| 自分の手で直すことで器への愛着が深まる |
完成まで1〜3ヶ月以上かかる |
| 技術が身につき繰り返し使えるスキルになる |
仕上がりには練習・慣れが必要 |
プロに依頼する場合のメリット・デメリット
| メリット |
デメリット |
| 確実で美しい仕上がりが期待できる |
費用は5,000〜30,000円程度 |
| 本漆仕上げで食器として安全に使える |
納期が2〜6ヶ月かかる場合がある |
| 時間と手間を省ける |
職人のスケジュールに左右される |
おすすめの判断基準
初めての方には、まず金継ぎワークショップで体験してみることをおすすめします。
1回体験することで「自分でやってみたい」か「プロに任せたい」かが自然と見えてきます。
思い入れのある器・食器として確実に使い続けたい器は、プロへの依頼が安心です。
練習用の器で手順を覚えてから、大切な器に挑戦するという順番も、賢い選択肢のひとつです。
よくある質問(FAQ)
Q. 金継ぎのやり方は初心者でも習得できますか?
基本的なやり方は初心者でも習得できます。ただし本漆を使った本格的な金継ぎは、乾燥管理や研磨など各工程に慣れが必要です。最初は簡易キットや金継ぎワークショップで手順を体験してから、本漆に挑戦するとスムーズに習得できます。
Q. 金継ぎキットと道具を個別に揃えるのはどちらがいいですか?
初心者にはキットがおすすめです。3,000〜12,000円程度で必要なものが揃い、説明書も付属しているものが多いです。経験を積んでから、使いやすい道具を個別に揃えていくのが理想的な流れです。ただし食器への使用を考えるなら、本漆使用のキットかを必ず確認してください。
Q. 金継ぎはどこで学べますか?
全国の陶芸教室・カルチャーセンター・工芸スタジオで金継ぎワークショップが開催されています。1回体験できるコースもあり、費用は3,000〜8,000円程度が相場です。まず1回体験することで、道具の扱い方や乾燥管理のコツを実感として学べます。
Q. 金継ぎした器はどのくらいで使えますか?
最後の仕上げ工程から
最低でも1ヶ月、できれば2〜3ヶ月待つことをおすすめします。漆が表面上は乾いていても、内部の硬化には時間がかかります。使い始めるのが早すぎると、漆が柔らかいまま使用することになり耐久性が落ちます。
Q. 金継ぎは陶器だけでなく磁器にもできますか?
できます。ただし磁器は表面が滑らかなため、漆が定着しにくい場合があります。磁器に金継ぎをする際は、接着面を耐水ペーパーで軽く荒らしてから漆を塗ると定着しやすくなります。慎重に作業を進めることが大切です。
Q. 金継ぎ後の器のお手入れ方法を教えてください。
やさしく
手洗いを基本としてください。食洗機・電子レンジ・直火・長時間の水浸けは避けてください。急激な温度変化は漆の劣化につながります。柔らかいスポンジと中性洗剤で洗い、洗後はすぐに水気を拭き取ることで、美しい状態を長く保てます。
いとをかしが選ばれる理由

「金継ぎをしてもらいたいけれど、どこに頼めばいいかわからない」
「大切な器を、信頼できる人に任せたい」
そうした思いを持つ方に、私たちいとをかしをお選びいただいています。
生涯破損保証:購入した器が割れたら、無料で金継ぎ修理
いとをかしでご購入いただいた器は、
生涯破損保証の対象です。
万が一割れてしまった場合でも、無料で金継ぎ修理をいたします。
「割れたらどうしよう」という不安なく、毎日の食卓で安心して使い続けられる。
それが、私たちが器を届けるうえで最も大切にしていることです。
金継ぎサービス:割れた器を美しく蘇らせる
金継ぎの仕上がりに不安がある方、大切な器をプロに任せたい方には、いとをかしの金継ぎサービスをご利用いただけます。
熟練の職人が本漆と金粉で丁寧に修復し、器に新たな景色を生み出します。
産地直送の本物の手仕事品
いとをかしが扱う器は、日本各地の産地から厳選した
本物の手仕事品です。
元料理人が実際に料理を盛りつけて選んだ器だからこそ、食卓での使いやすさと美しさを両立しています。
金継ぎのやり方を学ぶなかで「良い器を大切に使い続けたい」と感じた方には、ぜひ私たちの器をご覧いただきたいと思います。
▶
いとをかしの器コレクションをチェックする
まとめ

金継ぎのやり方は、正しい道具と手順を理解すれば初心者でも始められます。
この記事でご紹介した内容を改めて整理します。
-
本漆と簡易キットの違いを理解し、目的に合った方法を選ぶ
-
8つの基本道具を揃えるか、初心者向けキットで始める
-
10ステップの手順を焦らず一つずつ進める
-
湿度管理が金継ぎ成功の鍵。室の湿度70〜80%を保つ
- 仕上がりに不安があれば、
プロへの依頼も賢い選択肢
割れた器をただ捨てるのではなく、金の線で新しい美しさを纏わせる。
その過程で器への愛着はより深まり、毎日の食卓が少し特別なものになるはずです。
いとをかしでは、器の購入から金継ぎによる修復まで、器との暮らしを末長くサポートしています。
大切な器のことでお悩みの方は、ぜひ一度ご覧ください。
▶
いとをかしの器コレクションをチェックする
いとをかし編集部は、元料理人のメンバーを中心に、器と食の関係を深く探求しながら伝統工芸品の魅力を発信しています。
欠けた器を、捨てずに継ぐ。
「縁起が悪い」と言われる欠けた器も、金継ぎで継げば、新しい景色になります。
いとをかしの器は、お買い上げ後も本漆の金継ぎでお戻しできます。修繕のご相談は下記からお気軽にどうぞ。
※ お返事まで3〜5営業日いただきます。