貫入とは?陶器に入るひびの仕組みと器を育てる楽しみ方
器棚の奥から取り出したお気に入りの陶器に、細かいひびのような模様が入っているのに気がついたことはありませんか。「ひびが入ってしまった?」と驚いてしまうかもしれませんが、それは貫入(かんにゅう)という現象で、陶器ならではの美しさのひとつです。
当店の編集部は、元料理人のメンバーを中心に構成されています。長年厨房に立つ中で、貫入のある器と数多く向き合ってきました。使い込むほどに変わる器の表情は、まるで料理と器が対話をしているようで、食卓に奥深い物語をもたらしてくれます。
この記事では、貫入とは何か、どのように生まれるのか、そしてどのように向き合えば器の魅力が増すのかを、元料理人の視点からお伝えします。
貫入(かんにゅう)とは?陶器のひびが美しい理由
貫入とは、陶器の釉薬(うわぐすり)の表面に入る、細かいひびのような模様のことです。英語では「クラックル」や「クレーズ」とも呼ばれます。見た目はひびに見えますが、器が壊れているわけではなく、焼成の過程で自然に生まれる現象です。
貫入が入りやすい器として知られるのは、志野焼・萩焼・唐津焼・信楽焼など、素朴な土味を持つ陶器が挙げられます。茶道の世界では古くから貫入のある器が珍重されてきた歴史があり、その不均一な表情こそが器の個性として愛されてきました。
貫入が生まれる仕組み|釉薬と素地の収縮率の違い
陶器は、粘土で形成した「素地(きじ)」の上にガラス質の釉薬を塗り、高温で焼き上げます。焼成後、窯から取り出されて冷える過程で、素地と釉薬はそれぞれ異なる収縮率で縮もうとします。
一般的に釉薬の方が素地よりも大きく縮むため、表面に張り出すような力がかかり、ひびのような亀裂が生じます。これが貫入の正体です。収縮率の差は土や釉薬の種類によって異なるため、同じ窯で焼いた同じ形の器でも、貫入のパターンはひとつとして同じにはなりません。
貫入が入る瞬間、「ピン、ピン」という澄んだ音が鳴ることがあります。静かな空間でその音に耳を澄ませると、器が誕生した瞬間に立ち会えるような不思議な体験ができます。
貫入は「欠陥」ではなく「個性」
貫入は製造上の欠陥ではなく、素材と工程から必然的に生まれる表情です。磁器は素地が緻密で吸水性が低いため貫入が入りにくいですが、陶器は土の粒子が粗く、釉薬との収縮差が生まれやすい性質を持ちます。これが陶器ならではの経年変化の源でもあります。
料理人が選ぶ食器の選び方の記事でも触れていますが、器は料理を引き立てる「表現の舞台」です。貫入のある器は、料理の色や温度感を吸収しながら独自の表情を帯びていく、まさに生きている道具です。
器を育てる|貫入から始まる経年変化の楽しみ
「器を育てる」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。貫入のある陶器は、使うたびに料理や飲みものの色素が染み込み、ひびの模様が少しずつ浮かび上がってきます。
以下では、貫入の育て方と、使い込んでいくと器にどのような変化が生まれるかをご紹介します。
使い込むほどに変わる器の表情
緑茶を毎日注ぎ続けた湯呑みには、貫入に沿って茶褐色が染み込み、独特のグラデーションが生まれます。酒器なら、日本酒の琥珀色が器全体に馴染み、まるで骨董品のような深みを帯びていきます。
当店の元料理人は、こう語ります。「貫入の入った器に料理を盛り続けると、まるで器が料理を覚えてくれているようで、時間が経つほどにその器でしか出せない雰囲気が生まれてくる。」
これは、磁器にはできない、陶器だけの体験です。
自分色に染める使い方のコツ
貫入を積極的に育てたい場合は、はじめから同じ用途で使い続けるのがコツです。お茶専用、日本酒専用と決めてしまうと、染み込む色が統一されて美しい模様に育ちます。
様々な料理に使うと複数の色素が混じり合い、それはそれでアンティークのような趣が生まれます。どちらが正解ということはなく、使う人の暮らしの積み重ねが器に刻まれていくのです。ろくろで手挽きされた手挽き マグカップ 波佐見焼 まだら唐津 杓掛けのような土味のある器は、毎日の積み重ねで表情が豊かになる一点です。
貫入のある陶器のお手入れ方法
貫入があると「汚れが取れないのでは」「衛生的に大丈夫か」と心配になる方もいらっしゃいます。ここでは、貫入の器を長く使い続けるためのお手入れをご説明します。
目止めで染み込みを防ぐ方法
器を使い始める前に「目止め(めどめ)」を行うと、貫入への染み込みをある程度防ぐことができます。
目止めの手順は次のとおりです。
①器を米の研ぎ汁に浸して弱火で10〜15分ほど煮沸する。②自然に冷まして取り出す。③水洗いしてから使用する。
デンプン質が貫入の隙間を塞ぎ、汚れや染みが入りにくくなります。ただし、意図的に器を育てたい方は目止めをしないという選択もあります。
汚れが気になるときの対処法
染み込んだ汚れが気になる場合は、重曹を溶かしたぬるま湯(水1リットルに重曹大さじ1)に数時間浸けるか、食器用の酸素系漂白剤(塩素系は避ける)を薄めて使用すると効果的です。
陶器の性質上、完全に汚れが取れない場合もあります。それも含めて「器の歴史」と考えると、貫入のある陶器との付き合い方が変わってくるはずです。使用後は水分をしっかり拭き取ってから乾かすことで、カビの発生を防げます。
陶器の割れ方で修理できるか決まる?見極め方と最適な修復法の記事も、お手入れの参考にしてください。
よくある質問
貫入についてお客様からよくいただく質問をまとめました。
Q. 貫入のある陶器は食洗機で洗えますか?
基本的に、貫入のある陶器への食洗機の使用はおすすめしません。高温・高圧の水流は器への負担が大きく、貫入から水分が浸透して劣化しやすくなります。手洗いで丁寧に洗うことで、器を長く使い続けることができます。
Q. 貫入は割れですか?修理が必要ですか?
貫入は釉薬の表面に生まれる模様であり、器の強度を損なうひびではありません。そのため、修理の必要はありません。ただし、貫入から器が欠けたり割れたりした場合は、金継ぎで美しく修復することができます。
Q. 貫入が入っていない陶器もありますか?
はい。貫入が入るかどうかは、素地と釉薬の組み合わせや焼成温度によって異なります。磁器は貫入が入りにくく、陶器の中でも使用する釉薬の種類によって貫入のあるものとないものがあります。購入前に気になる場合は、当店にお気軽にお問い合わせください。
Q. 貫入から臭いが染み込みました。どうすれば取れますか?
重曹を溶かしたぬるま湯に数時間浸ける方法が有効です。それでも改善しない場合は、日当たりの良い場所で数時間自然乾燥させると臭いが和らぐことがあります。素材の性質上、完全に取りきれない場合もあることをご了承ください。
いとをかしが選ばれる理由|器との長い付き合いを支えるサービス
「器は、使ってからが本当の始まりだと思っています」と、当店の元料理人は語ります。貫入のある器を選ぶことは、自分だけの表情を育てる旅の出発点です。いとをかしでは、そんな旅を長く安心して楽しんでいただけるよう、以下のサービスをご用意しています。
生涯破損保証と無料金継ぎ修理
当店では、ご購入いただいた器が割れた場合に無料で金継ぎ修理を行う生涯破損保証をご用意しています。貫入のある陶器は磁器に比べると衝撃に弱い場合もありますが、生涯破損保証があれば万が一割れても安心です。
金継ぎとは、割れた器を漆で接着し、金粉で仕上げる日本の伝統的な修復技術です。修復跡が新たな美しさになる金継ぎは、「器を育てる」という発想に通じる技術といえます。詳しくは金継ぎ生涯破損保証とは?仕組み・費用・選び方をご覧ください。
元料理人の目利きで選んだ、産地直送の手仕事品
当店が取り扱う器は、日本各地の産地から職人の手仕事を直接仕入れています。元料理人のメンバーが実際に料理を盛りつけて確かめた器だけを厳選しているため、食卓で本当に映える器をお届けできます。
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まとめ|貫入は陶器との深い関係を育てる出発点
貫入は、陶器が焼かれる工程で自然に生まれるひびの模様です。釉薬と素地の収縮率の違いから生じるこの現象は、磁器にはない陶器ならではの個性。使い込むほどに色が染み込み、自分だけの表情を帯びていきます。
目止めをしてきれいに使い続けるもよし、あえてそのまま染み込ませて自分色に育てるもよし。どちらの楽しみ方も、器との深い関係を積み重ねることに変わりありません。
当店いとをかしでは、産地直送の手仕事の器と、生涯破損保証(無料金継ぎ修理)をご用意しています。貫入のある陶器をお探しの方は、ぜひ当店の商品をご覧ください。
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いとをかし編集部は、元料理人のメンバーを中心に、器と食の関係を深く探求しながら伝統工芸品の魅力を発信しています。